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JRRS若手優秀論文賞 受賞論文

JRRS若手優秀論文賞 エントリー論文

研究紹介

Our Research 2021
​優秀論文賞対象期間(2020/10/1~2021/9/10)

No. 2021-12 呉 ピンシユウ

論文掲載時の所属:北海道大学大学院 医学研究院
現在の所属:台湾台北医学大学 放射線治療科

Lysosomal trafficking mediated by Arl8b and BORC promotes invasion of cancer cells that survive radiation

Ping-Hsiu Wu, Yasuhito Onodera, Amato J Giaccia, Quynh-Thu Le, Shinichi Shimizu, Hiroki Shirato, Jin-Min Nam.

Communications Biology, 3(1):620, 2020.

https://doi.org/10.1038/s42003-020-01339-9

 転移の引き金となる癌細胞の浸潤は,癌患者の予後を決定する要因の一つである。放射線治療後に残存した癌細胞は浸潤能を亢進する場合があり,そのメカニズムの解明は予後の改善に重要である。
 本研究では,放射線照射後に生存した癌細胞において,細胞内小器官であるリソソームが細胞膜側に輸送されてエキソサイトーシスを起こし,細胞外マトリックスを分解するプロテアーゼ等を細胞外に放出することで,浸潤能が亢進することを明らかにした。また,これらの過程にリソソームの輸送を制御するBORC-Arl8b-SKIP経路が関与することを明らかにした(図)。
 放射線による細胞内小器官の機能や輸送への影響については未だ不明な点が多い。本研究成果に基づき,治療後の癌細胞におけるリソソーム等の細胞内小器官の動態をより詳細に解析することで,治療効果の向上に繋がる,さらなる知見や分子標的が得られると期待される。本研究は,国内外のメディアで多く取り上げられ大きな注目を集めている(Altmeric86;トップ4%以内)。

 

【プレスリリース】

https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/201028_pr.pdf

図‗呉.png

No. 2021-11 塚田 海馬

東京工業大学・科学技術創成研究院

The FHA domain of PNKP is essential for its recruitment to DNA damage sites and maintenance of genome stability

 

Tsukada K, Shimada M, Imamura R, Saikawa K, Ishiai M, Matsumoto Y.

Mutat Res. Jan-Jun (822):111727.

DOI: 10.1016/j.mrfmmm.2020.111727

 生体には様々なDNA損傷を修復するための仕組み(DDR)が備わっており、この機構の破綻ががんや遺伝病等の疾患の原因となる。そのため、DDR の分子メカニズムを解明することは、がんや遺伝病の発生メカニズムの理解や治療法の開発につながる重要な研究課題である。
 本研究では、DNA修復因子PNKPのDNA損傷部位の認識メカニズムをライブセルイメージングにより秒単位で明らかにした(図)。PNKPがDNA損傷部位を認識するためには、PNKPのFHAドメイン内に位置するArg35とArg48を介したXRCC1/XRCC4等とのタンパク質結合が必要であり、それらがリン酸化により厳密に制御されることを明らかにした。また、PNKPのDNA損傷認識能力の欠失は、細胞のDNA修復能力を著しく低下させ、放射線に対する細胞生存率やゲノム安定性維持能力の低下を引き起こすことを突き止めた。本研究成果は、PNKPが放射線増感剤の分子標的として有望であることを示している。特に、FHAドメインへの結合を標的とした化合物による増感の可能性を見出した。

 

【東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所 (現ゼロカーボンエネルギー研究所)プレスリリース】

http://www-old.lane.iir.titech.ac.jp/jp/activities/achievement/2020/201102.html

1._図_(Mutat_Res).png

No. 2021-10 塚田 海馬

東京工業大学・科学技術創成研究院

The Bloom syndrome complex senses RPA-coated single-stranded DNA to restart stalled replication forks

 

Shorrocks AK*, Jones SE*, Tsukada K*, Morrow CA*, Belblidia Z, Shen J, Vendrell I, Fischer R, Kessler BM, Blackford AN. *: Joint-first authors

Nat Commun. 12(1), 585, 2021.

DOI: 10.1038/s41467-020-20818-5

 BLMは、通常二本鎖であるDNA を一本鎖へと開裂する活性を持つDNA ヘリカーゼであり、DNA複製・組換え・修復など、様々な細胞応答経路に関わる。また、ヒトにおいてBLM遺伝子の変異は放射線感受性、光過敏症、低身長症、免疫不全、若年性発がんリスクの上昇など多様な症状を呈する常染色体劣性遺伝疾患Bloom症候群の原因となる。しかし、細胞内での詳細な機能と症状の関係性は明らかになっていない。
 本研究では、BLMがBTR (BLM-TOP3A-RMI1/2)複合体レベルで3つの一本鎖DNA結合タンパク質RPAと結合し、複製ストレス解消を促すことを明らかにした (図)。興味深いことに、RPAとの結合を欠失したBLM変異体は、既知の表現型の中でDNA複製ストレス応答機能のみを欠失しており、DNA修復経路の選択やDNA組換えなどの細胞応答経路には影響を与えない、機能分離変異体であることを突き止めた。
本研究成果は、BLMの機能分離メカニズムを解明した最初の論文であり、今後個体レベルの表現型解析を行うことで、Bloom症候群の発症機構、特に複製ストレス応答が関わる症状の解明に繋がることが期待される。

2._図_(Nat_Commun).png

No. 2021-9 諏訪 達也

京都大学大学院 生命科学研究科附属放射線生物研究センター
京都大学大学院 医学研究科 放射線腫瘍学・画像応用治療学講座

Long-term outcomes of an esophagus-preserving chemoradiotherapy strategy for patients with endoscopically unresectable stage I thoracic esophageal squamous cell carcinoma

 

Suwa T, Ishida Y, Negoro Y, Kusumi F, Kadokawa Y, Aizawa R, Nakajima T, Okamoto Y, Okuno Y, Yamada K,  Ogura M, Murakami M, and Mizowaki T.

Clinical and Translational Radiation Oncology, Volume 30, P88-94, 2021.
DOI: 10.1016/j.ctro.2021.08.002

 近年、化学療法や放射線治療の技術は著しく進歩したが、現在でも食道癌の標準治療は手術とされる。それは、治療成績だけではなく、放射線治療の晩期障害を考慮されてのことである。しかし、食道機能維持という観点では、食道を温存できる化学放射線療法のメリットは大きい。この問題に対して、食道癌の化学放射線治療の成績や晩期障害について検討した研究はあるが、基本的に手術適応のない症例での検討であり、手術可能の食道癌症例で放射線治療の治療効果および晩期有害事象を解析した研究はほぼ無い。
 本研究では、1992年から2005年に、手術可能なI期の胸部食道癌と診断された全症例を対象とした。そして、術前化学放射線治療(44 Gy/40 fr (1日2回照射)後に中間評価を行い、治療効果が良好なら化学放射線治療を継続し、効果不良なら手術を行う、という独創的な戦略で治療を行った(図1)。結果、ほぼ全例が根治的に化学放射線治療で加療され、10年以上の平均観察期間で、手術と同等の成績(5年全生存率:約80%)を達成した。また、Grade3以上の有害事象も認めなかった。本研究は、手術可能I期食道癌でも化学放射線療法を標準治療として考慮する重要なエビデンスを示した。

図1.png

No. 2021-8 坂田 洞察

量子科学技術研究開発機構 量子医科学研究所 物理工学部

Performance Evaluation for Repair of Hsgc-c5 Carcinoma Cell Using geant4-Dna

 

Dousatsu Sakata*, Masao Suzuki, Ryoichi Hirayama, Yasushi Abe, Masayuki Muramatsu, Shinji Sato, Oleg Belov, Ioanna Kyriakou, Dimitris Emfietzoglou, Susanna Guatelli, Sebastien Incerti, Taku Inaniwa.

Cansers (in press), 2021.
https://www.preprints.org/manuscript/202107.0005/v1

 モンテカルロコードを用いた初期DNA損傷推定の歴史は長く、過去数十年に渡って研究が行われてきた。PARTRC等のモンテカルロコードによって、初期DNA損傷数やDNA再結合数、修復蛋白集積等に対して、実験結果を再現するシミュレーションが可能になった。しかし現在まで、モンテカルロで推定されるDNA損傷数から細胞の生存率(或いは致死率)を予測する試みはない。物理化学的素過程の計算から始まり、細胞の修復プロセスを考慮した細胞の生死推定は、細胞の放射線応答の包括的理解の為に重要であり、一つの悲願であった。本研究では、モンテカルロコードGeant4-DNAを用いて、“細胞レベル”の放射線輸送シミュレーションからHSGc-C5細胞のDNA再結合数と細胞生存率を同時に予測可能にするプラットフォームの開発を行った。また、本プラットフォームを用いて、DNA損傷がどれくらいの確率で修復しきれず細胞致死を誘発するか、その致死確率の推定を行った。本研究はGeant4-DNAを用いた放射線生物研究の集大成である。本研究により、物理化学的素過程の変化が細胞致死にどう影響するか直接的に検証する事が可能になる。

OurResearch_DousatsuSakata.png

No. 2021-7 孫 略

産業技術総合研究所 健康医工学研究部門

Neurobehavioral effects of acute low-dose whole-body irradiation

 

Bekal, M., Sun, L., Ueno, S., & Moritake, T.

Journal of Radiation Research, 2021.
https://doi.org/10.1093/jrr/rrab026

 本研究では、1Gyの(全身)被ばくでも有意に脳機能障害が(マウスに)発症することを示した。先行研究では脳機能障害発症(マウス)の最小線量は3Gyであるとされていたため、我々は本研究によって過去最低を記録したことになる。
 脳腫瘍に対する放射線治療では、神経細胞が壊死してIQが低下することが知られている。比較的低線量(1〜3Gy)での脳機能障害メカニズムはこれまで不明であったが、我々は「ホルモンバランスの異常」と「生涯にわたり増殖する細胞群がいるとされる海馬での神経細胞数の減少」に起因する可能性を示唆した。

No. 2021-6 孫 略

産業技術総合研究所 健康医工学研究部門

MHY1485 enhances X-irradiation-induced apoptosis and senescence in tumor cells

 

Sun, L., Morikawa, K., Sogo, Y., & Sugiura, Y.

Journal of Radiation Research, 2021.
https://doi.org/10.1093/jrr/rrab057

 栄養センサーであるmTORは、がんで高発現し、増殖や転移において重要な役割を担っている。そのため、ラパマイシンなどのmTOR阻害薬は抗がん剤として承認されている。
 一方で、mTORの高発現は頭頸部癌細胞の老化を誘導して予後が良くなる、と指摘する論文がある(PMID: 26832959)。また、mTORの活性化はCTLを活性化させ、抗PD-1抗体の治療効果を増強したり(PMID: 28096382)、腫瘍組織内のTregの数を減少させたり(PMID: 29066174)など、抗腫瘍免疫にとってプラスに働くことが知られている。
 本研究では、数少ないmTOR活性化剤であるMHY1485と放射線治療とがどのようなシナジー効果を生むのか、in vitroで解析した。mTOR活性化によるがん細胞の増殖亢進が懸念されたが、少なくとも我々の実験系では逆に増殖が抑制される結果となり、放射線増感作用が示された。また、MHY1485のmTOR活性化作用は予想していたよりも小さく、酸化ストレスや小胞体ストレス等が惹起されることを明らかにした。当初はROSの増加を理由にFerroptosisに着目していたが、違っていた。現在は、in vivoでの効果を検証中である。

 一方で、アルコール摂取(飲酒)によって脳内mTORが活性化し、アルコール依存症を引き起こすとの報告がある(PMID: 34315870)。アルコール依存症がMHY1485を利用した治療においても懸念される副作用となるかもしれない。

No. 2021-5 孫 略

産業技術総合研究所 健康医工学研究部門

Total body irradiation causes a chronic decrease in antioxidant levels

Sun, L., Inaba, Y., Sogo, Y., Ito, A., Bekal, M., Chida, K., & Moritake, T.

Scientific Reports 11(1), 1-9, 2021.
https://www.nature.com/articles/s41598-021-86187-1

 晩期放射線障害(がん、白内障、心疾患など)は被ばく後数年〜数十年を経て発症するが、そのメカニズムには不明な点が多く、発症を予測するバイオマーカーや臨床症状も同定されていない。我々は、晩期障害の多くが“酸化ストレス”と関連していることに着目し、マウスをモデルに放射線被ばく後の抗酸化能の変化を解析し、放射線事故・災害時におけるヒトの被ばく線量推定法や健康被害評価法の確立を目指している。
 我々はこれまでの研究で、「被ばくしたマウスの抗酸化能は1週間以内に線量依存的に低下する」ことを発見した(PMID: 29743580)。今回は、それを長期的に観察することによって、「血液の抗酸化能は慢性的(死ぬまで)に低下する」ことを明らかにした。これらの結果により、抗酸化物質の慢性的な減少が晩期放射線障害の病因に寄与している可能性が考えられる。
 今後は、マウス実験によって抗酸化能低下のメカニズムを解明すると共に、ヒトの個人差 (生活習慣、年齢、性別など)による抗酸化能への影響を調査し、より高感度・高精度・簡便・迅速な手法の開発を目指す。最終的には、福島第一原発事故地域の帰還者等への健康影響の評価に貢献することを目指す。

No. 2021-4 島田 幹男

東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所

α-glucosyl-rutin activates immediate early genes in human induced pluripotent stem cells

Tomoko Miyake, Munekazu Kuge, Yoshihisa Matsumoto, Mikio Shimada.
Stem Cell Research, Volume 56, 2021, 10251.

https://doi.org/10.1016/j.scr.2021.102511

 多能性幹細胞はエネルギー代謝や分子内制御においてがん細胞と似た特徴を示すことが多く、その機構を解析することはがん細胞の理解と制御に貢献することが期待される。本研究では多能性幹細胞のモデル細胞としてヒトiPS細胞を使用し、α-グルコシルルチン処理時の代謝活性の変化を解析した。α-グルコシルルチンは、天然フラボノイド配糖体であるルチンの誘導体であり、ルチンよりも水に溶けやすい性質を持つ。そのため、食品や化粧品の抗酸化剤、着色剤として使われてきた他、放射線防護作用を持つことが報告されている。しかしながら、これまで幹細胞に対するα-グルコシルルチンの影響は明らかにされていなかった。本研究の結果、iPS細胞では、α-グルコシルルチン処理によって最初期遺伝子(immediate early gene; IEG)応答が起こり、細胞内代謝が一過性に増加すること発見した。これは幹細胞に対する、α-グルコシルルチンの作用機序を明らかにした最初の例であり、幹細胞の多能性維持や細胞内代謝制御機構の解明だけでなく、食品や化粧品など、様々な分野への波及効果が期待される。

No. 2021-3 佐藤 嘉晃

弘前大学大学院 保健学研究科

DAP3 Is Involved in Modulation of Cellular Radiation Response by RIG-I-Like Receptor Agonist in Human Lung Adenocarcinoma Cells

Sato Y, Yoshino H, Kashiwakura I, Tsuruga E. 
International journal of molecular sciences 22(1), 420, 2021.

https://doi.org/10.3390/ijms22010420

 がんは本邦における死因の第一位であり,その中でも肺腺癌患者は極めて予後不良である。放射線療法は肺癌等に対する主要ながん治療法の一つであるが,予後の向上のためには治療時における抗腫瘍免疫の活性化及び放射線抵抗性の克服が重要である。

 近年,病原体特有の分子を認識し免疫応答を誘導するパターン認識受容体の一種であるRetinoic acid-inducible gene-I-like receptor (RLR) が抗腫瘍免疫活性及び癌細胞に対する細胞死誘導のための標的分子として期待されている。

 本論文は,RLR刺激因子が翻訳抑制を介してDAP3のタンパク発現を低下させること,DAP3がヒト肺腺癌細胞の放射線抵抗性を制御していること,を世界で初めて示した点において新規性があると言える。ヒト肺腺癌細胞の放射線抵抗性機構は不明な点が多く,本研究結果が放射線抵抗性機構を解明するための糸口になると期待できる。放射線抵抗性におけるDAP3の役割についてはさらなる研究が必要であるが,DAP3を標的とした新たな治療戦略が期待される。

No. 2021-2 鈴木 基史

 

(当時)量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所
(現在)関西医科大学 新医学研究所(仮称)設置準備室

Radiation-Induced Autophagy in Human Pancreatic Cancer Cells is Critically Dependent on G2 Checkpoint Activation: A Mechanism of Radioresistance in Pancreatic Cancer

Motofumi Suzuki, Mayuka Anko, Maki Ohara, Ken-ichiro Matsumoto, and Sumitaka Hasegawa.
Int J Radiat Oncol Biol Phys, 111(1):260-271, 2021.
https://doi.org/10.1016/j.ijrobp.2021.04.001

 放射線を照射されたがん細胞では、G2期チェックポイントが活性化し、細胞周期が一時的に停止する。細胞は停止期間を利用してDNA修復を行うため、G2期チェックポイントは放射線抵抗性につながる。また、放射線抵抗性に寄与する他の防護機構としてオートファジーが知られており、オートファジー阻害は放射線による細胞死を増強することが報告されている。これまで両機構は独立した機構として認識されており、特に放射線によって生じるオートファジーの意義については明らかになっていなかった。
 本研究では、一般に放射線抵抗性を有することで知られる膵がんの細胞において、放射線照射後にG2期チェックポイントとオートファジーが同時に活性化されることを明らかにした。また、G2期チェックポイントの阻害によりオートファジーも抑制されたことから、チェックポイント依存的にオートファジーが活性化されていることが示された。さらに、照射後のオートファジーの活性により細胞生存に必要なATPが産生されていることを明らかにし、G2期チェックポイントとオートファジーが協調的に働いて放射線抵抗性に寄与していることを示した。

【量子科学技術研究開発機構プレスリリース】

https://www.qst.go.jp/site/press/20210607.html

No. 2021-1 澤野 豊明

 

福島県立医科大学 放射線健康管理学講座

Successful emergency evacuation from a hospital within a 5-km radius of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant: the importance of cooperation with an external body

 

Toyoaki Sawano, Shuichi Shigetomi, Akihiko Ozaki, Yoshitaka Nishikawa, Arinobu Hori, Tomoyoshi Oikawa, Masaharu Maeda, Masaharu Tsubokura.

J Radiat Res, 62(Supplement_1), i122-i128, 2021.

https://doi.org/10.1093/jrr/rraa122

 福島原発事故後の、原発から5km県内にある病院の避難の実情に関してまとめた論文です。福島原発事故は、言うまでも無く我が国の放射線に関する認知、対策、研究など様々なことに大きな影響を与えた事象です。多くの報告があるように、放射線に被ばくに伴う直接的な健康影響は限定的な一方で、避難やその後の生活・社会環境変化に伴う健康影響は甚大でした。特に病院の避難に伴う、高齢者、社会的な弱者の死亡は、全ての健康影響の中でも最も重要であり、かつ影響度が大きかったことが知られています。

 国内の原発の近くに存在するそのような施設の避難対策は、今後の放射線防護対策、事故に伴う住民の命を守るために最も必要なことと言えます。今回、応募する論文は、そのような病院の実情をまとめるために、関係者にインタビューを行い、既存のデータを収集しながら時系列的にまとめることで、その教訓を抽出し、経過をまとめました。この論文は、今後の日本の放射線防護対策にとって非常に重要な論文となると考えています。

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